金曜夜9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週はヨーロッパ映画を2本ご紹介しました。
今日9月9日公開のイタリア映画『靴ひものロンド』と、既に公開中の・フランス映画『彼女のいない部屋』です。
どちらも家族の物語で、いずれも一筋縄ではいかない意外性のある結末に惹かれました。
まずは、イタリア映画『靴ひものロンド』。
【STORY】
4人家族の平穏な暮らしは、夫の浮気で終わりを告げた。
家を出たい夫、繋ぎ止めようとする妻、静かに見つめる子供たち。
混沌とした数年間を経て、家族は些細なきっかけでふたたび共に暮らし始める…。
月日は流れ、老夫婦は夏のバカンスに出かけるが、戻ってみると家はひどく荒らされ、飼い猫は失踪していた―。
【REVIEW】
原作は、ドメニコ・スタルノーネ「靴ひも」(新潮クレスト・ブックス)
1980年初頭のナポリ。
夫はラジオ朗読のホストを務めるアルド、そして妻のヴァンダ、娘アンナ、息子サンドロの4人家族。
夫に別の女性ができて、彼は家族の元を去る。
妻ヴァンダの精神状態は徐々に不安定になり、その行動もエスカレートしていく……。
昔、日本映画で『死の棘』(島尾敏雄原作、出演は岸部一徳・松坂慶子)という作品があったが、これも夫の浮気で妻の心が壊れていくお話だ。
“裏切り”が妻を深く傷つけるということは同じだが、イタリアと日本ではこんなにテイストの違う作品になるのか……と思う。
長年にわたる夫婦の不仲を見ていた子どもたち(アンナとサンドロ)は、両親に振り回されて犠牲になっていた。
ところが数年後、サンドロの靴ひもの結び方というほんの些細なことがきっかけで、この家族は形だけとはいえ元に戻る。
ラストの展開には本当にびっくりさせられたが、なぜか痛快だった。
痛快と思うか、恐ろしいと思うか……これは人それぞれ違うかもしれないが……。
監督・脚本・編集:ダニエーレ・ルケッティ 『ローマ法王になる日まで』『我らの生活』
原作:ドメニコ・スタルノーネ「靴ひも」(関口英子訳、新潮クレスト・ブックス刊)
出演:アルバ・ロルヴァケル、ルイジ・ロ・カーショ、ラウラ・モランテ、シルヴィオ・オルランド ほか
配給:樂舎
9月9日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
関西では、アップリンク京都 シネ・リーブル梅田、9月16日(金)~シネ・リーブル神戸で公開
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