【とっておきシネマ】『アウシュヴィッツの生還者』製作国：カナダ・ハンガリー・アメリカ
金曜の夜９時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週ご紹介した映画は、アウシュヴィッツから生還した男性の息子が父の半生について書き上げた、衝撃の実話を映画化した作品です。
監督は、『レインマン』でアカデミー賞監督賞やベルリン国際映画祭金熊賞に輝いたバリー・レヴィンソン。
主人公ハリーを演じたのは、ベン・フォスター。
アウシュヴィッツでのボクサーを演じるため体重を２８㌔も落とし、戦後のシーンのため、また元の体重に戻すという身体改造の限界に挑戦。
同じ人物とは思えないほど変わりはてたビジュアルになることによって、アウシュヴィッツでの心身ともに凄惨な生活がうかがい知れ、息を呑みます。
© 2022 HEAVYWEIGHT HOLDINGS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
【STORY】
1949年、ナチスの収容所から生還したハリー・ハフトは、アメリカに渡りボクサーとして活躍する一方で、生き別れになった恋人レアを探していた。
レアに自分の生存を知らせようと、記者の取材を受けるハリー。
「自分が生き延びた理由は、ナチスが主催する賭けボクシングで、同胞のユダヤ人と闘って勝ち続けたからだ」と告白し、一躍時の人となる。
だが、レアは見つからず、彼女の死を確信したハリーはボクサーを引退する。
その後、ハリーは別の女性と新たな人生を歩んでいたが、彼女にすら打ち明けられないさらなる秘密に心をかき乱されていた。
そんな中、レアが生きているという報せが届く──。
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【REVIEW】
この映画、最初はラブストーリーだと思っていたが、物語はそう単純な話ではない。
強制収容所に入れられたハリーは、腕力があり、喧嘩に強く、攻撃性も併せ持っていたため、ナチスの将校から見込まれボクシングの訓練を受ける。
将校はハリーと他のユダヤ人を闘わせ、収容所の娯楽見世物にし、さらに賭けの対象にしてお金を稼いでいた。
その闘いで「負け」ることは「死」を意味し、もちろんハリーにはそれを断るという道はない。
ハリーは生き延びるために野獣のように何十人もの同胞と闘うが、自分の「生」と引き換えに同胞らを「死」に至らしめたことに生涯苦しむのだ。
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何故ハリーはそうまでして生き延びたかったのか……。
収容所に入れられる前、彼にはレアという恋人がいて、必ず生きて再会しようと誓い合っていたからだ。
運よく脱走し、終戦後にアメリカに渡ってボクサーになったハリーは、自分の名前をマスコミに取り上げてもらい、レアに生存を知らせようとする。
その代償として、収容所時代のことが明るみに出てユダヤ人のコミュニティから敬遠されることになるが、それでもレアと再会したかったのだ。
しかし、レアの情報は全く入ってこず、そんな時に移民サービス事務所で親身になってくれる女性スタッフの存在が大きくなっていく～。
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ハリーにとって、収容所での凄惨な日々は、どれだけの年月が過ぎても記憶から消すことはできない。
いや、現在の自分が幸せであればあるほど、過去に苦しむことになるのは仕方のないことだろう。
それが、全く彼の責任ではないにしても……。
戦争によって、ナチスによって、たった一度の人生を狂わされた人物の物語がまたひとつ私たちの心に刻まれる。
原作は、主人公ハリーの息子であるアラン・スコット・ハフト。
父親・ハリー・ハフトのアウシュヴィッツでの体験や、その後の人生を綴った本『Harry Haft ,Survivor of Auschwitz,Challenger of Rocky Marciano』。
ユダヤ人のハリー・ハフトは、アウシュヴィッツでナチス親衛隊の娯楽のためボクサーとして訓練され、収容所では76回の試合が行われた。
1945年に脱走し、終戦まで生き延び、その後アメリカに移住してヘビー級のプロボクサーになる。
1949年、ロッキー・マルシア―ノとの試合を最後にボクサーを引退した。2007年、82歳で永眠。
監督：バリー・レヴィンソン
出演：ベン・フォスター ヴィッキー・クリープス ビリー・マグヌッセン ピーター・サースガード ダル・ズーゾフスキー ジョン・レグイザモ ダニー・デヴィート
2021年製作／129分／G／カナダ・ハンガリー・アメリカ／配給：キノフィルムズ
https://sv-movie.jp/
8月11日（金）から全国公開 関西の劇場は、アップリンク京都 シネ・リーブル梅田 kino cinema神戸国際。
