今週のとっておきの1本は、安藤サクラが日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞し、異例のロングランヒットとなった『百円の恋』（2014年）の中国版リメイク作品です。中国のコメディアン兼女優のジャー・リンが主演・監督を務めた『YOLO百元の恋』。すでに7月5日（金）から公開中、元気の出る快作です！
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～シネマエッセイ～
「座右の銘」というほどかしこまった存在ではないけれど、信条にしている好きな言葉がいくつかある。たとえば、チャーリー・チャップリンの「下を向いていたら、虹を見つけることはできないよ」はその一つだ。私自身がチャップリンの映画やインタビュー記事などで目にしたものではなく、数年前にネットで見つけた。何と優しい励ましの言葉だろうと思う。悲しい時も、落ち込んでいる時も下を向かず前を向いて、そして時々は空を見上げよう……もしかしたら希望の虹が架かっているかもしれないから……。あなたの好きな言葉は？と聞かれたら、この言葉が直ぐに頭に浮かぶ今日この頃。
映画『YOLO 百元の恋』を見て、また一つ好きな言葉ができた。タイトルになっている「YOLO」である。これはどういう意味なのだろう？ 調べて胸がキュンとなった。「You Only Live Once」の頭文字を並べた英語のスラングで、「人生は一度きり」という意味だそうだ。一度しかない人生だから思いきり楽しみたいし、色々やりたいこともある、下を向いている場合じゃない。さきのチャップリンの“虹”にもつながる前向きな言葉である。
『YOLO 百元の恋』の主人公は、たった一度しかない人生を捨てている。いや、捨てていた……という過去形に訂正しよう。何の夢も目標もなく、ただ怠惰な日々を過ごしていた主人公。恋人を親友に取られる。妹と喧嘩をして家を出る。一人で生きるために仕方なく働き始める。好きな人ができるが打ちのめされる出来事が起きる。そんなふうに一度も勝ったことがない自分の人生を変えようと、彼女はボクシングの試合に挑む。醒めた目で見れば、怠惰な人間は急に変われない、世の中そんなにうまくはいかない、映画だから……などと色々思う。しかし、主人公を演じるジャー・リンが実際に厳しいボクシングのトレーニングをこなし、体重を50キロ絞ったのは事実で、その様子をそのまま映画の中に入れ込んでいる。まるでドキュメンタリーだ。試合に勝とうが負けようが、ジャン・リンと彼女が演じる主人公が「自分に勝った」のは確かなことである。観ている者が圧倒されるほど説得力ある「人生は一度きり」に、心からの拍手喝采を贈りたい。
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32歳、無職、実家に引きこもるドゥ・ローインは、筋金入りの怠け者。ある日、出戻りの妹と大喧嘩をし、とうとう家を出る羽目になったローインは一人暮らしを始める。仕方なくバイトをはじめた彼女は、偶然出会ったボクサーのハオ・クンに一目惚れし、彼がトレーナーをしているジムに通うことになる。大事な試合を控えたクンを支えることに生きる希望を見出すローイン。しかしKO負けしたクンは彼女の前から姿を消してしまう。悲しみに暮れるローインはあることにチャレンジするが、プライドをボロボロにされる結果となる。一度は勝ってみたい……そんな思いで、ついにボクシング大会への出場を決意するローインだが……。
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監督・主演：ジャー・リン
出演：ジャー・リン、ライ・チァイン ほか
原題：『热辣滚烫』 英題：『YOLO』 配給：東映ビデオ
2024/中国/129 分/5.1ch/シネマスコープ
公式 HP：https://yolo100gennokoi.com/
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【とっておきシネマ】
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