今週のとっておきの１本は、三谷幸喜脚本・監督の日本映画『スオミの話をしよう』です。
長澤まさみさんの七変化ならぬ五変化（？）や、メインキャスト全員が歌って踊るラストのミュージカルシーンが話題のミステリー・コメディ。イオンシネマ三田WTでも上映されるので、ぜひ劇場でお楽しみください！
©2024「スオミの話をしよう」製作委員会
～シネマエッセイ～
私は何時間でもじっと座っていられる。それ故か、趣味は読書や映画・演劇鑑賞など、じっと座って楽しめることに偏っているような気がする。ところが、最近は演劇鑑賞を諦めざるを得ない状況に陥っている。原因は「睡魔」である。何年か前の冬、私はある舞台を観に行った。男性俳優のみで繰り広げられるブラックコメディ……だったらしい。“だったらしい”というのは、上演時間の半分以上を私が眠っていたからだ。けっして退屈して眠ったわけではない。前半の会話劇がまるで心地よい子守歌のように私を眠りへと誘ったようなのだ。勿体ないことに、エンディングの拍手の音で目が醒めるという失態をおかしてしまった。当然のことながら、芝居の結末がさっぱりわからないままうなだれて劇場を後にした。あぁ、本当に勿体ないことをした……。しかし、数年後にリベンジチャンスが訪れる。同じキャストでの再演があったのだ。今度こそはラストまで見届けるぞ……と勇んで出かけたが、私はまたしても眠ってしまった。結局、その芝居がどんなストーリーだったのか、今でもわからないままである。２度も劇場に足を運んだのに……。何度も言うが、つまらなかったわけではない。むしろ男性俳優たちの個性豊かな演技には冒頭からワクワクさせられたし、「結末はどうなるのだろう」「今日は絶対最後まで見届けるぞ」と、私の心は前のめりだったのに……だ。ミュージカルなら音楽とダンスという刺激が私を眠らせないだろう。しかし、演劇（ストレートプレイ）の空間は、俳優の台詞が心地よく響くまどろみのゆりかごと化すようだ。正直に言えば、同じ芝居で2度も眠りこけた私は、その頃から他にもいくつかの舞台を睡魔によって台無しにしていた。暗闇がそうさせるのか、加齢がそうさせるのか……。いずれにしても、最近は「ミュージカル以外の舞台に気安く出かけない」と、肝に銘じているのである。
ただし、例外はある。三谷幸喜作品だ。基本的に「大人のおふざけ」が嫌いではないので、三谷幸喜の脚本や演出の舞台なら観劇もやぶさかではない私。9月13日に公開される映画『スオミの話をしよう』は、その三谷幸喜脚本・監督のミステリー・コメディで、映画なのに、ほぼワンシチュエーションの台詞劇になっていて、まるで舞台を観ている気分になるのが嬉しい。大人のおふざけだから、声をたてて笑うというより、忍び笑いとでも言おうか「うふふ」や「ニマニマ」な気分にさせられる、おススメの演劇風シネマである。
©2024「スオミの話をしよう」製作委員会
その日、刑事が訪れたのは著名な詩人の豪邸。≪スオミ≫が昨日から行方不明だという。スオミとは詩人の妻で、そして刑事の元妻。刑事は、すぐに正式な捜査を開始すべきだと主張するが詩人は「大ごとにするな」と言って聞かない。やがて屋敷に続々と集まってくる、スオミの過去を知る男たち。誰が一番スオミを愛していたのか。誰が一番スオミに愛されていたのか。スオミの安否そっちのけで、男たちは熱く語り合う。だが不思議なことに、彼らの思い出の中のスオミは、見た目も、性格も、まるで別人。スオミはどこへ消えたのか。スオミとは一体、何者なのか……。
©2024「スオミの話をしよう」製作委員会
©2024「スオミの話をしよう」製作委員会
監督・脚本：三谷幸喜
出演：長澤まさみ 西島秀俊 松坂桃李 瀬戸康史 遠藤憲一 小林隆 坂東彌十郎 戸塚純貴 阿南健治 梶原善 宮澤エマ
2024年製作／日本／114分／配給：東宝
©2024「スオミの話をしよう」製作委員会
映画公式サイト https://suomi-movie.jp/index.html
9月13日（金）から全国公開中
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