今週のとっておきの1本は、犬好き鳥飼がおススメする『DOG DAYS 君といつまでも』という韓国映画です。でも犬が主役というわけではありません。犬を通して関わり合っていく人間たちを描いた群像劇なのです。11月1日(金)公開です。
~シネマエッセイ~
午前5時30分。目覚ましアラームが鳴る。身支度をする音。しばらくすると、一人と一匹が玄関から出ていく気配がする。夫と愛犬の朝の散歩だ。それは、晴れの日も雨の日も毎日欠かせない我が家の習慣である。
先代犬が14歳で天国に逝ってから7年後。新しく我が家に迎えたケイスケは、ネットで探した淡路島にあるブリーダーから購入したラブラドールレトリバーである。同じ日に生まれた10匹の子犬たちの可愛い写真がアップされていて、毎日チェックしていたら、どんどん子犬が減っていく。あれよあれよという間に、残り2匹になってしまった。「売れてしまう前に、ちょっと見に行こうか」夫がワクワク顔で言う。「即決しないよう、現金を持たずに行こう」私がそう言ったのは、衝動買いにブレーキをかけるためだった。翌日、本当にお金を用意せずに、ドライブがてら淡路島に出かけた。自宅を出て高速を走り、明石大橋を渡れば淡路島。ブリーダー宅には1時間ほどで着いた。子犬は、10キロほどに成長した雄のイエローラブ1匹になっていた。(ちょうど良かった! 2匹残っていたら、どちらかを選ぶなんて無理だ!)。もう私は連れて帰る気になっている。夫の顔を見るとニヤッと頷く。衝動買いのアクセルは踏みっぱなしで止まらない。近くのコンビニのATMでお金を引き出し、代金を支払った。驚いたことに、夫は先代犬の使っていた首輪を内緒で持参していた。(買う気満々で来たんだ~)。早速、その首輪を子犬に付けて、車の後部座席に座らせる。ブリーダー宅に到着してから30分と経っていなかった。帰り道、明石大橋を渡りながら決めた名前は、私の大好きな桑田佳祐さんから無断拝借した「ケイスケ」。
あれから6年になり、10キロの仔犬は39キロに成長した。やんちゃなケイスケを動物病院に連れていく時は大騒ぎだ。まず駐車場に入ると「ワン、ワン!」と吠え始め、病院の玄関の自動ドアが開くと2本足で立って吠え続ける。順番が来て自分の名前が呼ばれると、また吠える。待合室は動物好きの人ばかりなので苦笑しながら温かい目で見てくれるが、飼い主としては「躾がなっていない」証拠なので、とても恥ずかしい……。
さて、映画『DOG DAYS 君といつまでも』には、もっと躾のできていない飼い主さんたちがいるようだ……というのは、動物病院の真ん前に犬の糞が転がっていて、主人公のミンサンが踏んでしまうからだ。そんなシーンから始まるハートウォーミングな物語。主人公を演じたユ・ヘジンも動物病院の院長を演じたキム・ソヒョンも好きな俳優だけれど、注目したのは有名建築家を演じるユン・ヨジョン。彼女は、2020年のアメリカ映画『ミナリ』で韓国人俳優として初のアカデミー賞助演女優賞を獲得している。言葉ではなく、間と表情で感情を表現する演技が印象深い。彼女をはじめバラバラな人生をおくる人たちが、犬を連れて訪れる動物病院で出会い、そして関わり合っていく。犬好きだけでなく、すべての人々の心を温めてくれるであろう作品だ。
きっちりした性格のミンサンは、動物病院「DOG DAYS」のせいで、自宅周辺に犬の糞が転がっていることが忌々しい。院長ジニョンと今日もやり合ったミンサンは、有名建築家ミンソにたしなめられる。リゾート開発に関わるミンサンは、ミンソを紹介してもらおうと、ジニョンが助けた保護犬のチワワを一晩預かることに。ミンソは散歩中に倒れ、フレンチブルドッグの愛犬ワンダを見失う。居合わせた配達員のジヌはワンダ探しを手伝う。その頃、作曲家ソニョンとジョンアの夫妻に養子に迎えられた少女ジユが、迷い犬と出会う。一方「DOG DAYS」には、ゴールデンレトリバーのスティングが担ぎ込まれる。大慌てで連れてきたのは、恋人スジョンの留守中にスティングを預かるヒョン。そこへスジョンの元彼ダニエルが現れて……。
監督:キム・ドクミン
出演:ユン・ヨジョン ユ・ヘジン キム・ソヒョン
2024年製作/120分/G/韓国/配給:ギャガ
https://www.rakuten-ipcontent.com/dogdays/
11月1日(金)全国公開
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