2025年1月20日には、ドナルド・トランプ氏が2度目のアメリカ大統領に就任。世界中が注目するその日が、目前に迫っています。今週のとっておきの1本は、ほぼ半世紀前の1970年代アメリカで、成功を夢見る20代のドナルド・トランプが、伝説の弁護士に導かれてトップへと成り上がるまでの物語。“ナイーブなお坊ちゃん”だったトランプが、いかにして大成功をおさめたのか……主演のセバスチャン・スタンが、まさに若き日のトランプにしか見えないのはお見事! 非常に興味深いトランプ誕生物語を、ぜひ劇場でお楽しみください。
~シネマエッセイ~
2017年の1月、私は友人とハワイ旅行を楽しんだ。大好きなハワイは何度も訪れたが、冬のハワイは初めてだった。常夏の島ハワイ……言い古された言葉ではある(もう今は言わない?)が、冬のハワイは穏やかな気候で最高。日差しは真夏に比べればずっと穏やかで、ゴルフをしても日焼けは軽めで済む。冬は雨季らしく、細かいシャワーのような雨が降ったりするが、それも1日中ではないのであまり気にならない。そして、雨上がりに架かる虹はやはり冬の方が多いようだ。私もこの滞在中に2~3度虹を見た。
さて、宿泊したホテルはワイキキのはずれにある高層でスタイリッシュな外観のトランプ・インターナショナル・ワイキキ。予約したのは前年2016年の夏だった。オフシーズンとはいえ、最高級ホテルなのでリーズナブルな価格設定の部屋は2部屋しか残っておらず、慌てて予約をしたのだった。まさかその後、トランプ氏がアメリカ大統領選に勝利するとは思っておらず、私たちがハワイに行く頃に彼が第45代アメリカ大統領に就任した。トランプ氏はアメリカの「不動産王」といわれる人物で、過激な発言が物議を醸し、どんな政治をするのか世界中が注目していた。一緒に行くポジティブな友人は「大統領就任直後だから、記念割引とかあるかも?」と、そしてネガティブな小心者の私は「ホテルのまわりでデモがあるかも?」とそれぞれの妄想を膨らませる。実際のところは、記念割引もデモもなかった。
費用の節約のため、最高級ホテルでの食事はあきらめることにした。朝食は毎回、道路を挟んで向かい側にある小さなホテルのスターバックスで済ませ、昼食はショッピングモールのフードコート、夕食はチーズケーキファクトリーなどのカジュアルレストランで済ませることにしたのだ。だから、トランプホテルの印象と言えばレストランやスパなどではなく、武骨なエレベーターのダイナミックな振動と、超スリムなベッド、小柄な私では届かないシャワーヘッドの高さ……のみである。超高級ホテルをビジネスホテル並みの「寝るだけ」に使ってしまったことが、今でも心残りだ。ただ、ホテルを出たところで、「シェキナベイベー」のフレーズで知られる、あの有名なロックンローラーに遭遇したことはラッキーだった。おそらく彼もトランプホテルに滞在していたに違いない。写真撮影をお願いすればよかったと、これもまた心残りではある。
20代のドナルド・トランプは危機に瀕していた。不動産業を営む父の会社が政府に訴えられ、破産寸前まで追い込まれていたのだ。そんな中、トランプは悪名高き辣腕弁護士ロイ・コーンと出会う。大統領をはじめとする大物顧客を抱え、勝つためには人の道に外れた手段を平気で選び法さえ無視する冷酷な男だ。コーンはトランプに〈勝つための3つのルール〉を伝授し、服装から立ち居振る舞いまで洗練された人物へと仕立てあげる。やがてトランプはいくつもの大事業を成功させていくが、コーンさえ思いもよらない怪物へと変貌していく……。
監督:アリ・アッバシ
出演:セバスチャン・スタン ジェレミー・ストロング マリア・バカローヴァ マーティン・ドノヴァン
2024/アメリカ/123分/配給:キノフィルムズ
https://trump-movie.jp/
1月17日(金)ロードショー
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