今週は、困難を乗り越え幸せを掴んでいく女性たちを描いた『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』をご紹介します。ローマの衣装工房を舞台に、高い技術をもつお針子たちが納得いくまで何度もやり直し、最高の一着を仕上げていくというお話。そんな彼女たちがそれぞれ抱える個人的な事情のあれこれも描かれます。多くの観客の共感を得たこの映画は2024年にイタリアで大ヒットした作品。衣装工房のお話だけに、登場するドレスや登場人物のファッションも大きな見どころです。

© 2024 Greenboo Production – Faros Film – Vision Distribution
シネマエッセイ
ダイヤモンドのネックレスを失くしたことがある。20年以上前のことだが、いまだに見つからない。どこで失くしたのかも曖昧である。友人の家族の通夜に参列するため喪服に着替えた時に外してバッグに入れた……そこまではハッキリ憶えているが、失くしたと気づいたのはそれから何日も経ってからだった。バッグやコートのポケットの中を探しても無い。その何日かの間に職場のレクレーションで温泉に行ったので、浴場の脱衣籠に置き忘れたのかもしれない。いや、もしかしたら化粧ポーチに入れた? そのポーチをこの間洗濯したから、もしかしたら洗濯機の中? 温泉に問い合わせ、洗濯機の中や家中のありとあらゆる可能性のある場所を探したけれど、結局見つからないまま。このダイヤモンドのネックレスは、婚約指輪をリフォームした大切な記念のものである。宝石に興味のない私が持っていた唯一の宝石だっただけに、思い出すだけで切なくなる。
世界で最も有名な宝石ダイヤモンドの、その名の由来はギリシャ語の「アダマス(adamas)」という言葉だそうだ。「征服されざる」、または「無敵の」という意味で、地球上で最も硬く美しい輝きを放つ宝石にふさわしい名前である。ギリシャ語からラテン語を経て、英語ではdiamond 、イタリア語ではdiamanteとなるらしい。
「あらゆる困難に耐えうる抵抗力を持つ女性は、何ものにも負けず輝き続けるダイヤモンドのような存在だ」これは、映画『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』のフェルザン・オズぺテク監督の言葉である。映画の中に登場する女性たちは、まさにダイヤモンドのように強く無敵で、そして……輝いている。女性たちへのオマージュ溢れるこの作品は、監督が若かりし助監督時代にローマの衣装工房で出会った人々との思い出が原点となっているとか。70年代のファッションや映画の衣装も懐かしいが、ラストに登場する赤いドレスが強烈に印象的である。様々な事情を抱えるお針子たちの頑張る強さと、イタリアのものづくりへの情熱が発する輝きに拍手喝采。

© 2024 Greenboo Production – Faros Film – Vision Distribution

© 2024 Greenboo Production – Faros Film – Vision Distribution
ストーリー
1970年代、ローマ。カノーヴァ姉妹が経営する衣装工房では、年に一度の昼食会を控えてお針子たちが忙しく立ち働いている。姉妹もお針子たちも普段口にすることはないけれど、それぞれに事情を抱えている。ある日アカデミー賞受賞歴のある衣装デザイナーが新作の依頼に現れる。またとない機会とアルベルタは相談もなしに全ての衣装制作を引き受けるが、気難しい映画監督の高い要求に応えるため、工房の忙しさは増していく。才能に溢れ全てを手に入れているかのような衣装デザイナーでさえも時に自信を失い衣装制作は困難を極める。一人ひとりは、脆く不完全でも、力を合わせ支え合い、見たこともないような至高の一着を作ろうと女性たちはやがて輝き始める。

© 2024 Greenboo Production – Faros Film – Vision Distribution

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監督:フェルザン・オズペテク
出演:ルイーザ・ラニエリ ジャスミン・トリンカ ステファノ・アコルシ
2024年/イタリア/135分/配給:チャイルド・フィルム
https://child-film.com/films/diamanti
6月19日(金)ロードショー
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