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【鳥飼美紀のとっておきシネマ】日本映画『さとこはいつも』

今週は日本映画『さとこはいつも』をご紹介しましょう。3人のさとこが、それぞれ〈書くこと〉に目覚めるオムニバス作品。あなたのまわりにもいる……いや、あなた自身かもしれないごく普通の女性たち。クスッと笑い、共感し、自分も頑張ろうと思える作品です。

©2026 「さとこはいつも」製作委員会

©2026 「さとこはいつも」製作委員会

 シネマエッセイ 
笑わないで欲しいが(いや笑ってもらってもいい)が、自称エッセイストの私。書き始めて10数年になる。最初に短期間通った文章教室の女性講師からは「あなたのエッセイは面白いけれど深みがない。なぜならあなたという人間に深みがないから」と指摘された。全くショックでもなく怒りも湧かず、バレたか……と思った。たしかに私は人として浅く、思考が単純、ゆえに人の心に響く文章を書くことができないという自覚はあるのだ。

私のエッセイ仲間にNさんという女性がいる。彼女のエッセイが今年の春、あるエッセイコンテストで銀賞に輝いた。賞金も授賞式典もあるちゃんとしたコンテストである。仲間として誇りに思うが、もちろん羨望もある。Nさんはまだエッセイを書き始めて3年ほどだと思うが、それこそいつも私たち仲間を唸らせる深い文章を書く人である。彼女はとても繊細な人で、心の底にさまざまな泉を持っている。澄んだ泉もあるが、ちょっと濁った泉もあり、最も深い泉には毒も渦巻いているような気がする。その時々で、清らかな水を掬い取ったり、毒入りの水を滴らせたりして色々なエッセイを披露してくれる。読み手はそのたびにほっこりしたり、ちょっと怖いと思ったり……。そんないくつかの泉を持つN
さんを心から羨ましいと思っていたら、夏にまた彼女のエッセイが別のコンテストで優秀賞を受賞した。「Nさん、絶好調だ~」と彼女を羨望ばかりしていないで、わが心の底に泉を……せめて一つでも滾々と湧く泉を持ちたいものである。

さて、映画『さとこはいつも』。“さとこ”という同じ名前の女性3人が、それぞれの書き方で文章を綴り始める物語だ。3人のさとこはごく普通の人生を生きている。1人は教師に勧められ、1人はスランプに陥り、1人は過去の夢を思い出して、ペンを持ちキーボードを叩く。バラバラに生きてきた3人のさとこたちの、これまでを楽しみ、そしてこれからを想像しながら自分自身も「何か書いてみようかな」と思えたら、是非ノートを広げてみてほしい。映画の公式サイトによると~誰もが、一冊なら自分の本が書ける~らしい。

©2026 「さとこはいつも」製作委員会

©2026 「さとこはいつも」製作委員会

©2026 「さとこはいつも」製作委員会

 ストーリー 
初めての恋を持て余し、妄想が暴走していく中学3年生、15歳の中井聡子。 不倫も仕事もスランプ気味、迷走中の映画配給会社勤務、35歳の西田沙都子。 子育てがひと段落し、久々の自分時間で夢に目覚めた55歳の飯島里子。年齢もまちまち、生きてきた時間も道もまるで違う3人の“さとこ”たちが、胸に秘めた想いを書き始めたとき、動き出した彼女たちの人生が少しずつ交差していく――。

監督・脚本:沖田修一
出演:有村架純 石田ひかり 姫野花春 吉田羊 オダギリジョー 筒井道隆
2026年/日本/139分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
https://happinet-phantom.com/satoko/
9月18日(金)全国公開

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