毎週金曜日、夜9時からの最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週ご紹介した映画は、『ハッピー・オールド・イヤー』というタイ映画です。
2017年の『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』で、カンニングをする女子高生を演じたチュティモン・ジョンジャルーンスックジンさん主演!
彼女は元々モデルで、9等身のカッコイイ体型がスタイリッシュな、ちょっと冨永愛さん似のクール・ビューティ。
今回は「断捨離」をテーマに、誰もが身に覚えのあるエピソード満載の作品です。
【STORY】
舞台はタイ・バンコク。
スウェーデンに留学していたデザイナーのジーンが主人公。
彼女は北欧で出会った“ミニマルスタイル”に心酔し、帰国後、母と兄と3人で暮らす自宅をリフォームしようと思い立つ。
かつて父が営んでいた音楽教室兼自宅を、今度は自分のオフィス兼自宅にしようというのだ。
親友のピンクにリフォームを依頼すると、彼女は「年内に家を空っぽにして年明けに工事に入る」という。
しかし、兄は“ミニマルスタイル”をよく分かっておらず、母はリフォームそのものに大反対なのだった!
残された時間は1ヶ月弱…。
家じゅうに溢れかえるモノを片っ端から捨てて “断捨離”をスタートさせるジーン。
ところが、あることで親友ピンクを怒らせてしまう。
雑誌や本など、捨てるものの中に昔ピンクから貰ったCDが入っていたのだ。
反省したジーンは、貰ったもの、借りたものを、友人たちに返していく。
しかし、元カレのエムから預かったカメラ、そして父が残したグランドピアノは、あっさりとは処分できず……。
果たしてジーンはすべてを断捨離し、新たな気持ちで新年を迎えることが出来るのか?
【REVIEW】
今年も残りわずか。この時期は多くの人が“大掃除”というプチ断捨離を行う。
家の中に溜った汚れや、不要なものなどをきれいにして新たな年を迎えたい……。
とはいえ、なかなかスッキリ片付かず、いつも中途半端なまま新年を迎えているのは私だけだろうか?
この映画はひとりの女性の「断捨離」を描きながら、主人公が「もの」だけではなく「過去」や「心」を整理する物語。
“ミニマルスタイル”のミニマルとは、英語で「最小限の」という意味。
完成度を追求するために装飾的趣向を凝らすのではなく、むしろそれらを必要最小限まで省略する表現スタイルだ。
言いなれた、または聞きなれた言葉なら「究極のシンプル」となるのだろうか。
冒頭に、真っ白な小部屋に真っ白なベッドとテーブルだけというシーンが出てくるが、それがジーンの目指すスタイル。
そのジーン、最初から最後まで(デザインは違えど)白いシャツに黒いパンツというシンプルなファッションで通す。
まさにこの作品を象徴するかのような、ミニマルスタイルそのものなのである。
監督は、等身大の若者の心の機微を描いてタイの国内外で高い評価を得る、ナワポン・タムロンラタナリットという若い監督だ。
「人生がときめく片づけの魔法」で、世界的な片づけブームを巻き起こした近藤麻理恵(コンマリ)さんのメソッドなども出てくる。
ただやみくもに捨てれば良いというものではなく、「もの」が繋いでくれた人間関係や愛情、それらをおろそかにせず身も心もリセットすることを教えてくれる。
親友のピンクが言う。
「片方だけが忘れても終わらないことがある」、「両方が忘れて初めて終わるのだ」と。
その言葉を聞いてジーンはある行動に出るが、その行動が思わぬ結果を招くことになる。
また、母親は父親の残したグランドピアノを売ることに猛反対するが、その父親についての事情もわかってくる。
思い出を手放したくない人、思い出を断ち切らなければ進めない人、どれが正解とも言えない。
この作品を観て、自分なりに「もの」や「思い出」を整理できたらいいなと思う。
監督:ナワポン・タムロンラタナリット
出演:チュティモン・ジョンジャルーンスックジン サニー・スワンメーターノン サリカー・サートシンスパー ティラワット・ゴーサワン パッチャー・キットチャイジャルーン アパシリ・チャンタラッサミー
2019年 タイ 113分 配給:ザジフィルムズ、マクザム
http://www.zaziefilms.com/happyoldyear/
12月11日(金)~ シネ・リーブル梅田 シネ・リーブル神戸 などで公開
新型コロナウィルスの感染拡大が続いています。
各劇場の感染予防対策を確認の上、どうぞ無理のない範囲でご鑑賞ください。