毎週金曜日夜9時からの最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」、鳥飼美紀です。
6月に入り1年の半分が過ぎようとしていますが、まだまだ日常は新型コロナ一色ですね。
今週のとっておきシネマは、『幸せの答え合わせ』(原題 Hope Gap)というイギリス映画でした。
「夫から切り出された離婚」というちょっとドキッとするテーマの作品です。
『グラディエイター』でアカデミー賞®脚本賞を受賞したウイリアム・ニコルソンが、自身の両親との関係をもとに書きあげた脚本。
そして、「この作品に関しては絶対に失望したくなかったから」と、自身で監督も手がけた理由を語っています。
そして、今日の番組では、サウンドトラック「Hope Gap(Original Motion Picture Soundtrack)」から、アレックス・ヘッフェスのMain Titlesにのせてご紹介しました。
映画の雰囲気を味わいつつお聞きいただけたかと思います。
【STORY】
イギリス南部の海辺の町シーフォード。
この町で暮らすグレースとエドワードは、もうすぐ結婚29周年を迎えようとしている。
仕事を引退したグレースは詩集の作成に時間を費やし、エドワードは高校で教師をしている。
一人息子のジェイミーが久しぶりに帰郷した週末、エドワードが突然、「家を出て行く」とグレースに別れを告げる。
グレースにとっては、まさに青天の霹靂!
絶望と怒りに支配される母グレースを支えるジェイミーも、自身の生き方や人間関係を見つめ直していく。
やがて、父と母、そして息子の3人それぞれの痛みは、思いもしなかった明日を連れて来る――。
【REVIEW】
まず、舞台となる夫婦が住むシ―フォードという海辺の小さな町の景色が素晴らしい。
サウスダウンズというむき出しの緩やかな丘を登ると、大きな海と町全体が見渡せる。
その丘の果てには壮大で真っ白な崖が立ちはだかり、その下に原題となっている「Hope Gap」と呼ばれる入り江が広がる。
癒される空間であり、厳しい空間でもある……それはある意味、家庭そのもののようにも思える。
エドワードの行動に傷ついた妻のグレースと息子のジェイミーは、それぞれ何度もこの丘に足を運び、町を眺め、海を見つめ、人生を見つめる。
冒頭からの夫婦のやり取りに息苦しくなる。
妻は自信たっぷりにあれこれと持論を展開し、夫は穏やかに何も言わず妻に紅茶を入れる。
妻は気に入らない。自分が何を言っても反論してこない、かといって同調もしない夫の態度が。
何を考えているのだろう~妻は夫の本心を聞きたいがために、その態度や口調がエスカレートしていく。
ついに夫はその修羅場から逃げ出す……他の女性に心の安らぎを求めて。
そして、夫婦だけではなく、二人の間で中立を保とうと努力する息子も混乱していく。
両親を理解しようとする彼は、やがて他人との親密な関係が築けない自分とも向き合い始める。
とにかく妻のグレースは強い。
そういう人に限って脆いものだが、グレースは只々強い。
彼女はこの試練を乗り越えようとする。
物語の終盤、ある女性がグレースに強烈な一言を穏やかにぶつける。
私はこの一言がグレースの人生のリスタートを決めたと思う。
さて結末は……。
人生、何があっても挫けることはない……という答えを教えてくれる物語。
監督・脚本:ウィリアム・ニコルソン
出演:アネット・べニング ビル・ナイ ジョシュ・オコナー サリー・ロジャース アイーシャ・ハート ライアン・マッケン
2018年 イギリス 100分 提供:木下グループ 配給:キノシネマ
https://movie.kinocinema.jp/works/hopegap
6月4日~キノシネマほか全国順次公開 関西では、アップリンク京都(6/4~)シネ・リーブル梅田 シネ・リーブル神戸 シネ・ピピアで順次公開予定
詳しくは劇場HPを確認の上、ご鑑賞ください。