今回ご紹介するのは、極限の音楽にして不朽の名曲〈ボレロ〉誕生の秘密を明かす音楽映画。来年2025年は〈ボレロ〉を作曲したモーリス・ラヴェル生誕150年というタイミングで、この夏全国順次公開されます。
~シネマエッセイ~
パリ五輪の真っ最中である。毎朝、パリの美しい街並みを背景にテレビ中継で競技の詳細が報告される。運動がからきしダメでスポーツ観戦にあまり熱心ではない私でも、やはり五輪ともなるとメダルの行方に毎朝一喜一憂している。ところで、その五輪開催地パリから西に45キロほど離れたモンフォール=ラモーリーという街に、あの名曲〈ボレロ〉という傑作を作曲したモーリス・ラヴェルの家が残っているそうだ。世界中の人々が予約して訪れるというその家で撮影が行われた作品が、この夏公開の映画『ボレロ 永遠の旋律』である。ラヴェルはこの場所で仕事をするために全てを自分好みにしたという。彼の使っていたピアノもそのまま置かれているので、そのピアノで〈ボレロ〉の旋律を奏でるシーンも撮影された。ラヴェルの生きていた時代のフランスは日本の文化が流行していたらしく浮世絵が飾られていたり、日本庭園風の庭も残っているらしい。少しカーブした道路に沿った細長い家の全景がラストに出てくる。傾斜地に建っているので庭側からの眺望はきっと素晴らしいはず。もしフランスに行くことがあれば是非とも訪れてみたいものだ。
1928年にラヴェルが作曲した〈ボレロ〉。その最高傑作をラヴェルは憎んでいたのか。苦悩の末に誕生したバレエ曲〈ボレロ〉はダンサーによって官能的に表現される。ラヴェルは工場の機械音からインスピレーションを得たというのに……。果たしてラヴェルは、人生の終わりに〈ボレロ〉と和解することができるのか? 印象に残るのは、〈ボレロ〉のメロディを口ずさんで「これを何度も繰り返して、最後には爆発して終わる……人生のように」というラヴェルの言葉。あらためて18分の全曲を聴いてみると、永遠に続くかのようなあの旋律が、飽きるどころか癖になってくる。そして、確かにクライマックスに向かって爆発するような高揚感があり、あっけなく終わってしまう。まさに人生そのもの。
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監督:アンヌ・フォンテーヌ
出演:ラファエル・ペルソナ、ドリヤ・ティリエ、ジャンヌ・バリバール、ヴァンサン・ペレーズ、エマニュエル・ドゥヴォス
BOLERO|121分|フランス|配給:ギャガ
© 2023 CINÉ-@ – CINÉFRANCE STUDIOS – F COMME FILM – SND – FRANCE 2 CINÉMA – ARTÉMIS PRODUCTIONS
公式HP https://gaga.ne.jp/bolero
8月9日(金) TOHOシネマズ シャンテ ほか全国順次公開
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