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【とっておきシネマ】 今週は、ブランチおすすめのエッセイ本を紹介!

サウンドブランチ 鳥飼美紀です。
みなさん、お元気ですか?
新型コロナウィルスの感染拡大により外出自粛要請が続く中、この春の新作映画が次々公開延期となっています。
ブランチでは、ご紹介する「オススメ映画」の準備はしているものの、この状態で「オススメです。ぜひ映画館へ」とは言えません。
そこで、今週は最新シネマ情報をお休みして、ブランチセレクトのオススメ本をご紹介させていただきました。

エッセイ集『顔の大きなアヒル』~昭和の風の中で~ 著者:菅原美智子 文芸社

顔の大きなアヒル ――昭和の風の中で――
菅原 美智子
文芸社

年に数回、関西朗読家クラブ主催の「朗読寄せ」という朗読会が、大阪・中之島の中央公会堂で開かれています。
私がこの本に出会ったのは、昨年12月に開かれたその「朗読寄せ」でした。
当日のプログラムの中に、下中恵子さんが朗読された『顔の大きなアヒル』というエッセイ集がありました。
『顔の大きなアヒル』というのは、菅原美智子さんという方の作品集です。
下中さんが朗読されたのは、その中の『洞爺丸』という一編でした。

昭和27年、著者の菅原さんが幼い頃、近所に母と息子二人の家庭がありました。
その家にお嫁さんが来て、赤ちゃんが生まれます。
昭和29年の秋、青森と函館を結ぶ青函連絡船が台風で沈没する事故が起こります。
事故の犠牲者名簿の中に、そのお嫁さんの名前がありました。
どうしてそのお嫁さんは青函連絡船に乗っていたのでしょうか。
実は、そのお家には切羽詰まった事情があったのでした……。

「人はどんなに一生懸命生きようとも、予期せぬ不幸に巻き込まれる理不尽さを覚悟して生きていかねばならない」
私は、ラストのこの菅原さんの言葉に心打たれました。
涙を堪えて朗読された下中さんの表情が今でも脳裏に蘇ります。
丁度その朗読会には、著者の菅原さんが来ておられました。
『洞爺丸』が収録されたエッセイ集『顔の大きなアヒル』を何冊か持参されていたので、即購入しました。

菅原美智子さんは、1944年(昭和19年)生まれ。
宮城県出身で現在は兵庫県にお住い……と、本のプロフィールに記されていました。
戦後の昭和、東北で暮らす菅原さん一家の日々の記憶が、ユーモラスでありながら品格のある文章で綴られています。
昭和・平成・令和と時代は変わりましたが、行間に甦る懐かしい昭和の日本に、ほんのひと時でも浸ってみませんか。
本のタイトルになっている『顔の大きなアヒル』については、冒頭のエッセイにユーモアを交えて書かれています。

朗読会から4か月たった現在、感染病の拡大で世界中の命がまさに理不尽に奪われています。
しかし、私たちはその理不尽を覚悟し、理不尽に耐え、理不尽と闘っていかなければなりません。
強い心と、冷静な心、そして周囲への優しい心を持って、日々過ごしていけたらと思います。

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