【とっておきシネマ】フランス映画『5月の花嫁学校』
毎週金曜日夜9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
5月も残りわずか……「爽やかな初夏」を感じる間もなく梅雨に入ってしまいましたね。
今年は鉢植えの紫陽花を買って庭に置き、雨に濡れる薄紫の花色を楽しませてもらっています。
さて、今週のとっておきシネマは、ジュリエット・ビノシュ主演のフランス映画『5月の花嫁学校』をご紹介しました。
© 2020 – LES FILMS DU KIOSQUE – FRANCE 3 CINÉMA – ORANGE STUDIO – UMEDIA
【STORY】
1967年。美しい街並みとぶどう畑で有名なフランスのアルザス地方。
小さな村にあるヴァン・デル・ベック家政学校に、18人の少女たちが入学した。
校長はピンクのスーツを粋に着こなすポーレット、経営者は夫のロベールだ。
二人の講師は、迷信を信じる修道女のマリー=テレーズと、ロベールの妹で料理長のジルベルト。
2年間で完璧な主婦に変身させる授業は、女性解放運動の風を感じる少女たちには時代遅れで、納得できないことばかり。
そんなある日、莫大な借金を遺して、ポーレットの夫であり学校の経営者であるロベールが急死する。
折しも、パリをはじめフランス全土では社会変革を求める五月革命が勃発し、大混乱に陥っていた。
さぁ、ポーレット率いる新生ヴァン・デル・ベック家政学校の運命やいかに!?
© 2020 – LES FILMS DU KIOSQUE – FRANCE 3 CINÉMA – ORANGE STUDIO – UMEDIA
【REVIEW】
五月革命とは、1968年5月にフランスのパリを中心に発生した反体制運動のこと。
ソルボンヌ大学での学生運動が労働運動と結びつき、ゼネストに発展し社会危機となった。
フランス政府は事態の収拾に努力するが鎮静化せず、当時のド＝ゴール大統領による議会解散・総選挙により与党が圧勝し、やっと収拾される。
そんなパリからの自由の風に乗って、花嫁学校の先生と生徒の革命が始まる～という、カラフルでキュートな人生賛歌である。
フランスを代表する大女優たちが、3人3様の個性で花嫁学校の先生役をパワフルに演じている。
花嫁学校の校長ポーレットにジュリエット・ビノシュ。
理想の良妻賢母を育成する花嫁学校で、少女たちをビシバシと鍛える鬼校長を嬉々として演じている。
そのポーレットの義理の妹で、夢見る少女のまま中年になったギックリ腰気味の料理の先生ジルベルトにヨランド・モロー。
♪「雪が降る」がＢＧＭというユニークな役柄だが、ラストに見せる失恋への潔さは清々しい。
そして、迷信を信じる一方で戦時中はレジスタンスとして戦った熱き修道女マリー・テレーズにノエミ・ルヴォウスキー。
煙草を片手にカーテンを開けるワイルドなシスターの、迷信かぶれの一言やワイルドすぎる行動がめちゃくちゃ笑えるので注目！
© 2020 – LES FILMS DU KIOSQUE – FRANCE 3 CINÉMA – ORANGE STUDIO – UMEDIA
生徒たちも、ただ素直で従順な少女たちではなく、なかなかの曲者揃い。
そして、フランス映画らしくちょっとしたお色気シーンもあるが、フランス語の効用なのか品が良い……気がする。
フランス語って、ロマンティックな恋愛映画だけではなく、コメディにもよく似合うおとぼけ感がある！
急死した夫が遺した多額の借金で破産寸前の学校を救うために、取引先の銀行に駆け込むポーレット。
彼女はそこである人と再会し、解決法を提案してもらい、学校は命拾いをする。
さらに、学校再建のために経営を学ぶポーレットは、亡き夫の前時代的な考え方に染まっていた自分に気づきはじめる。
先生も生徒も一緒になって、未来に向かい前進するクライマックスシーンは実に爽快である。
© 2020 – LES FILMS DU KIOSQUE – FRANCE 3 CINÉMA – ORANGE STUDIO – UMEDIA
監督：マルタン・プロヴォ
出演：ジュリエット・ビノシュ ヨランド・モロー ノエミ・ルヴォウスキー エドゥアール・ベール
2020年 フランス 109分 配給：アルバトロス・フィルム
https://5gatsu-hanayome.com/
６月４日（金）～京都シネマ
（順次公開）テアトル梅田／シネ・リーブル神戸
緊急事態宣言延長のため、各劇場のサイトで公開日や営業時間を確認の上、ご観賞下さい。
