毎週金曜日夜9時からの最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」、鳥飼美紀です。
今週ご紹介した映画は、イタリアのトスカーナ地方を舞台に、愛する家族を突然失ったダウン症の女性と老いた父の物語『わたしはダフネ』です。。
主人公のダフネは、チャーミングでシニカルで、そして逆境に負けないサバイバー。
彼女を見ているだけで元気になれる……そんな作品です。
【STORY】
ダフネは快活で社交的なダウン症の女性。
夏の終わり、彼女は父のルイジと母のマリアと三人で休暇を過ごす。
しかし、楽しいバカンスが一転、突然母のマリアが倒れ、帰らぬ人に……。
突然おとずれた母の死にダフネは泣き叫び、父のルイジはそんな彼女を心配し、必死に落ち着かせようとする。
マリアの葬儀が終わり、普段の生活へと戻る二人。
ダフネは、元来の明るさと勤務先のスーパーマーケットの同僚や友人の支えによって、少しずつ日常を取り戻していく。
一方、気丈にふるまっているようにみえたルイジは、喪失感と不安で押し潰されそうになっていた。
家族を精神的に支えていた妻のマリアがいなくり、ダフネと二人だけでどう生活していけばいいのか。
そんな父の異変に気付いたダフネはある提案をする。
それは、母の故郷コルニオーロへ歩いて向かうことだった……。
【REVIEW】
監督は、フェデリコ・ボンディ。
監督によると……数年前、年老いた父親とダウン症の娘がバスの停留所にいるのを見た。
走る車と通行人の中で、ふたりが静かに立ち尽くしている姿が、まるでヒーローかサバイバーのようだった。
そのイメージと、その時に抱いた感情にインスパイアされて生まれたのが『わたしはダフネ』だという。
主人公のダフネを演じたのは、自身もダウン症のカロリーナ・ラスパンティ。
優秀な成績で学校を卒業後、地元のスーパーに就職し、現在も勤務している。
2冊の自伝小説を出し、その収益はすべてダウン症の人々を支援する団体に寄付。
監督がSNSで見つけたというカロリーナは、女優初挑戦ながら自身と重なるダフネを生き生きと演じている。
ダフネもスーパーで働き、その職場のことを「死ぬほど好き」とはっきり言う。
自分の意見をきちんと伝えることができるダフネは、映画の中で数々の名言を言ってのける。
たとえば母親が亡くなった後、落ち込んでいる父親に対して、「忘れないで! 私たちは共働きで、一つのチームなのよ」と。
何たる逞しさ! 父と娘の間ではいつも主導権はダフネにある。
ダフネの明るさや逞しさに引きずられるように、前を向こうとする父親のルイジもまた愛おしい。
娘が提案した母親の故郷への旅は、悲しみを乗り越え互いを理解し合う、かけがえのないものになるはず。
ユーモアもたっぷり描かれ、ダフネの発する言葉にクスッと笑ったり感心したりしながら、自然に優しい気持ちになれる。
そして、多くの人の心に元気な気持ちが湧いてくる、明るくチャーミングな作品である。
オススメ!
監督・脚本:フェデリコ・ボンディ
出演:カロリーナ・ラスパンティ アントニオ・ピオヴァネッリ ステファニア・カッシーニ
2019年 イタリア 94分 配給:ザジフィルムズ
http://www.zaziefilms.com/dafne/
7月23日(金)シネ・リーブル梅田 7月30日(金)シネ・リーブル・神戸で公開。