金曜夜9時からの最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週も欲張って2本の作品をご紹介しました!
本日9月23日公開のフランス映画『秘密の森の、その向こう』と、来週9月30日公開のニュージーランド映画『ドライビング・バニー』です。
まずは、『秘密の森の、その向こう』からご紹介しましょう。
【STORY】
8才のネリーは両親と共に、森の中にぽつんと佇む祖母の家を訪れる。
大好きなおばあちゃんが亡くなったので、母のマリオンが少女時代を過ごした家を、片付けることになったのだ。
だが、何を見ても思い出に胸をしめつけられる母は、夫と娘を残して、どこかへ出て行ってしまう。
残されたネリーは、かつて母が遊んだという森を探索するうちに、自分と同じ年の少女と出会う。
母の名前「マリオン」を名乗るその少女の家に招かれると、そこは“おばあちゃんの家”だった──。
【REVIEW】
第72回カンヌ国際映画祭で、脚本賞とクィア・パルム賞を受賞した『燃ゆる女の肖像』(2019)のセリーヌ・シアマ監督の最新作!
『燃ゆる女の肖像』は18世紀フランスを舞台に、貴族の娘と彼女の肖像を描く女性画家の鮮烈な恋を描いた。
今回の作品は、8歳の少女を主人公にした、<喪失>と<癒し>の物語。
主人公のネリーとマリオンには、これが映画初出演となるジョセフィーヌ&ガブリエル・サンスという双子の姉妹がキャスティングされた。
ひとりが母親の8歳の頃を、もうひとりが娘(同じく8歳)を演じ、同じ時空間で交流するのはSFのようであり、ファンタジーのようでもある。
しかもタイムトラベルものにありがちな時空を超えて戻るときの、お約束やおまじないなど一切なし。
森に行けば会えるし、森を出れば現実に戻れる、という理屈抜きのシンプルな設定が好もしい。
おばあちゃんの家を片付ける、ほんの数日間、8歳のマリオンとネリーは森の中にツリーハウスを作り、パンケーキを焼き、お芝居をしたりして楽しむ。
原題は「プチママン」=小さなお母さんという意味の他に、大人のようにふるまう子供というニュアンスもあるとか。
たしかに、ふたりには8歳の子どもとは思えない大人っぽさを醸し出している。
ネリーがあるときマリオンに「実は、私はあなたの娘なの」と打ち明けるシーンがある。
打ち明けるネリーも、それを受け止めるマリオンも、全く混乱しないのは、心の中ですべてを理解しているからなのか。
あどけないけれど大人びた心を持つふたりの少女の魅力に観客はイチコロ!になるだろう。
73分という短い作品だが、ストーリーにもふたりの少女にもとても癒される、この秋オススメの1本。
監督・脚本:セリーヌ・シアマ
出演:ジョセフィーヌ・サンス ガブリエル・サンス ニナ・ミュリス マルゴ・アバスカル
2021年/フランス/73分/配給:ギャガ
https://gaga.ne.jp/petitemaman/
本日9月23日(金)~金)ヒューマントラストシネマ有楽町、 Bunkamura ル・シネマ ほか全国 順次 ロードショー
関西では、シネリーブル梅田、アップリンク京都、シネリーブル神戸などで公開