金曜の夜９時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週は、11月23日（水・祝）に公開される、湊かなえの小説を映画化した『母性』をご紹介しました。
イオンシネマ三田ウッディタウンでも上映されますよ！
娘であり続けたいまま子供を産んだ母親と、その母親から愛されることを渇望する娘の物語。
すべての女性に〈母性〉が必ず備わっているわけではない……そんなことを突きつけてくる作品です。
©2022 映画「母性」製作委員会
【STORY】
女子高生が遺体で発見された。その真相は不明。事件はなぜ起きたのか。
普通に見えた日常に、静かに刻み込まれた傷跡。愛せない母と、愛されたい娘。
同じ時、同じ出来事を回想しているはずなのに、二人の話は次第に食い違っていく。
母と娘がそれぞれ語る恐るべき秘密――２つの告白で事件は１８０度逆転し、やがて衝撃の結末へ。
母性に狂わされたのは母か？娘か？……この物語は、すべてを目撃する観客「あなたの証言」で完成する。
©2022 映画「母性」製作委員会
【REVIEW】
ストーリーを読むと、事件を解決する結末が待っているミステリーと思いがちだが、実はそうではない……。
湊かなえのデビュー作で2010年に映画化された小説『告白』では、6人の視点からストーリーが語られた。
この『母性』も、同じ出来事を母と娘のそれぞれの視点から語るという形で展開していく。
真実は一方向からだけの視点では捉えられないということを観客は再び思い知らされる。
©2022 映画「母性」製作委員会
〈母性〉がタイトルだけに、この物語では3人の母親が描かれる。
大地真央が演じるのは、主人公ルミ子の絵にかいたような理想の母親。
美しく穏やかで、物事をポジティブに捉え、ネガティブな言葉は一切口にせず、愛情深く娘や孫に接する。
一方、高畑淳子が扮するルミ子の夫の母（義母）は、まさにネガティブの塊のような姑。
旧家を取り仕切り、嫁をこき使い、口も意地も悪く、実の娘は溺愛するが嫁や孫に対する愛情は皆無なのである。
©2022 映画「母性」製作委員会
ルミ子の実母と義母……この両極端な〈母性〉を見せつける二人のコントラストが際立つ。
しかし、最も異様な〈母性〉を滲ませる母親は、戸田恵梨香が演じるルミ子自身なのだ。
母親に依存し、いつまでも母の娘でいたいルミ子は母親の言う通りに生き、その生き方に全く疑問を持たない。
彼女が通う絵画教室の男性が描いた花の絵を、自分はそうは思わないけれど母が絶賛したというだけで、その男性と交際しあっさり結婚する。
そして妊娠はしたものの、お腹にいる我が子のことを「お腹の中の生き物」と言い続けるルミ子に、はたして〈母性〉はあるのか？
彼女が自分の娘の名を呼ぶのは最後の最後で、観客はその時まで娘の名前を知らなかったことに初めて気づくだろう。
そんな母親を永野芽郁演じる娘は「どうすれば母に愛されるのか」煩悶し続ける。
愛せない母と、愛されたい娘、すれ違う二人に訪れる衝撃の結末とは……。
原作：湊かなえ『母性』（新潮文庫刊）
監督：廣木隆一
出演：戸田恵梨香 永野芽郁 三浦誠己 中村ゆり 山下リオ 高畑淳子 大地真央
2022年/日本/116分/配給：ワーナー・ブラザース映画
https://wwws.warnerbros.co.jp/bosei/
11月23日（水・祝）大阪ステーションシティシネマ TOHOシネマズ西宮OS イオンシネマ三田WTなどで公開
