【とっておきシネマ】イギリス映画『ドリーム・ホース』

2023.01.06

明けましておめでとうございます。
毎週金曜夜９時からの最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
本年も「とっておきシネマ」をどうぞよろしくお願いします。

新年最初のとっておきの１本は、ひとりの主婦と片田舎の小さなコミュニティで育てた馬が、最高峰のレースに挑戦する奇跡の実話です。
『ドリーム・ホース』の公式サイトを開いてみると、トップ画面には登場人物たちがレースの結果に歓喜している、それこそ「ブラボー！」なシーンの写真！
その歓喜の瞬間を私たち観客も共に実感し、元気や勇気が湧いてくるような、新年に相応しい作品です。
ぜひ、劇場の大きなスクリーンでご覧ください！

【STORY】
イギリス・ウエールズ、谷あいの小さな村。
夫と二人暮らし、パートと親の介護だけの“何もない人生”を送っていた主婦ジャン。
ジャンは馬主経験のあるハワードの話に触発されて競走馬を育てることを思いつく。
そして、村のみんなに共同で馬主となることを呼びかける。
週 10 ポンドずつ出しあって約 20 人の組合馬主となった彼らの夢と希望を乗せ、「ドリームアライアンス（夢の同盟）」と名付けられた馬は、奇跡的にレースを勝ち進んでいく。

【REVIEW】
競走馬ドリームアライアンスは 2001 年産まれ。
3 歳でデビューし、11 歳で引退するまでに 30 戦 5 勝の成績を残している。
主に障害レース（ハードルを越えて走る）を走り、8 歳となった 2009 年、この映画のハイライトであるウェールズ最大の障害レース「ウェルシュナショナル」を勝利したのが最高の勲章。

「朝、目覚めたときに、ワクワクするものが欲しい。人生が変わると思わせてくれるような何か」と主人公のジャンは思っている。
ウェールズの小さな元炭鉱の村で夫のブライアンと暮らすジャンの人生は、単調でワクワクすることなど皆無の日々。
夜明けと共に起きてスーパーの清掃、日中はレジ係として、夜は労働者クラブでバーテンダーとして働きながら、両親の介護も担っている。
そんなジャンが、あるきっかけで競争馬を飼育する決意をし、そして血統の良い牝馬を購入し、村人たちに呼びかけて馬主組合を作る。
やがて仔馬が生まれ、組合の投票によって「ドリームアライアンス（夢の同盟）」と名付けられる。

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このドリームアライアンスが、ビックリするほど大活躍するのだ。
組合員たちは、あれよあれよという間にドリームが優れた競走馬に成長するのを見て大喜び。
「決して儲けようとしないこと」を確認し合い、「胸の高鳴り」を求めて馬主組合を結成した彼らの、生き甲斐になっていくドリーム。
そして、ジャンにとっては何でも打ち明けられる親友であり、彼女を日常の苦労から逃避させてくれる存在となったドリーム。
調教師にドリームを預けるシーンで、ジャンは「このためにあなたは生まれてきたのよ」とドリームに話しかける。
まさに、ドリームは寂れた村に住む人々の「夢」として生まれてきたのだった。

一方、絶望的なピンチも描かれる。
馬のことや競馬に詳しくない人にとっては衝撃的な展開もあるが……そこからが奇跡！
ドリームの競走馬としての活躍をぜひ大きなスクリーンで観てほしい。
私が最もお薦めする「見どころ」は、レースで走るドリームの息遣いと土を蹴る足音である。
それを聞きながら観ていると、必死で走るドリームとの一体感が生まれ、臨場感あふれるレースシーンが何度も味わえるのだ。
笑い話のようだが、ラストのレースシーンを観ながら、乗馬をしたことのない私がまるで馬に乗っているように体を力強く揺らしていた。
自分がドリームに乗ってレースに出ているような錯覚に陥るカメラワークが凄い。
あなたもドリームの息遣いを体感し、体中にエネルギーをみなぎらせ、新らしい年をワクワクさせませんか？

監督：ユーロス・リン
出演：トニ・コレット　ダミアン・ルイス　オーウェン・ティール
2020 年／イギリス／英語／114 分／配給：ショウゲート
https://cinerack.jp/dream/
1月6日（金）～シネ・リーブル梅田　MOVIX京都　kino cinéma 神戸国際などで公開

とっておきシネマ, エンターテインメント

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