今週ご紹介するお薦め最新シネマは、双子の女子中学生のひと夏の胸キュン物語を、双子の姉妹監督が描いたタイ映画です。主人公の双子を演じたのはティティヤー・ジラポーンシンという一人の女優さん。双子の役を一人の女優が演じ分け、双子の監督が製作した映画……何だかこんがらがってきそうですが、とても可愛らしく、そしてせつないひと夏の物語です。
~シネマエッセイ~
1999年から2000年に年号が変わる頃、ミレニアム(千年紀)という言葉をイヤというほど耳にし、同時に自分自身もイヤというほど口にしたものだ。それには、1000年代から2000年代に変わる貴重な時空の一瞬に自分が生きていることへの興奮があった。また、年が変わるとコンピュータが誤作動する可能性がある……というメディア報道に不安も感じていた。そういえば、「世界は1999年に消滅する」というノストラダムスの大予言というのもあったなぁ。そんな1999年の年末、私はサザンオールスターズの年越しライブ『晴れ着DE ポン』を横浜アリーナで楽しんだ。新曲として初めて「TSUNAMI」が披露され、今でもその感動を記憶している。「人は涙見せずに大人になれない~」というフレーズを初めて聞いて深く共感した。しかし、翌年のレコード大賞を受賞したこの名曲は、2011年に発生した東日本大震災での津波災害を受け、テレビやラジオ、ライブなどでしばらくの間、私たちは耳にすることができなくなるのだが……。
世界中がミレニアムで浮足立っていた1999年のタイが舞台となる映画『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』は、一卵性双生児の中学生姉妹のひと夏のお話だ。挿入歌として、当時(1999年)のタイでデビューしたトライアンフ・キングダムというガールズデュオの2曲が使われている。劇中で双子のユーとミーが踊りながら歌う「Handkerchief」は、日本人にも馴染みのある「夜来香」のリズミカルなメロディから始まり、軽やかな余韻を残してくれる。また、エンドロールで流れる当時の大ヒット曲「You & Me」は心地よいバラードで、少女時代の胸キュンな出来事を優しく思い出させてくれる。音楽は感情を彩るベストアイテムだ。
さて、今年の夏も世界中のどこかで、小さな恋のあれこれが繰り広げられるのだろうか……。
中学生のユーとミーは一卵性双生児の姉妹。ふたりに違いがあるとすれば、ミーの頬に小さなホクロがあることくらい。生まれた時からずっと、どんなことでも一緒。隠し事ひとつなく、なんでもシェアしてきた。そんな絶対的信頼関係のふたりに、いつもとは何かが違う時間が流れはじめる。ハーフで色白、肩幅が広くて笑うと八重歯がのぞく素敵な男の子、同級生のマークが彼女たちの前に現れたからだ。シェアすることのできない“初恋”という感情に揺れるユーとミー。二人の忘れられない夏が、まもなく終わりを告げようとしていた…。
監督・脚本 : ワンウェーウ & ウェーウワン・ホンウィワット姉妹
出演:ティティヤー・ジラポーンシン (ユー/ミー) アンソニー・ブイサレート (マーク)
2023年 | タイ | 122分 | 配給・宣伝 : リアリーライクフィルムズ
https://www.reallylikefilms.com/futago
映画『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』挿入歌
【とっておきシネマ】
ハニーFMポッドキャストで配信しています。(再生ボタン▶を押すと番組が始まります)