今週のとっておきの1本は、実在する双子の天才ピアニスト、プレネ姉妹の人生をモデルにした『デュオ 1/2のピアニスト』です。夢を絶たれた天才ピアニストの双子姉妹が、ある“ひらめき”によって生み出した唯一無二の奇跡の旋律―。 ピアノへのかけがえのない想いに気づいた時、 “1/2のピアニスト”が最上級の“ソリスト”に生まれ変わるという感動の物語です。
© 2024 / JERICO – ONE WORLD FILMS – STUDIOCANAL – FRANCE 3 CINEMA
～シネマエッセイ～
あれは夢だったのだろうか。それとも私の心が創作した偽の記憶なのだろうか……。現在、私が熱烈なサザンオールスターズファンということを、私のまわりで知らない人はいない。しかしサザン以前の少女時代に、歌謡曲歌手N・Aさんのファンだったということを知っている人は、ほぼいない。実は中学・高校時代はファンクラブに入り、熱心にN・Aさんを応援していた。ファンクラブの情報通から大阪でのスケジュールを教えてもらい、テレビの公開番組収録後にみんなでタクシーに乗り込み、新大阪駅まで追いかけたことがある。新幹線のホームでサインしてもらったハンカチは、長いあいだ私の宝物だった。また京都南座公演後に、劇場の真向かいにある「菊水」というレストランで、今で言うファンミーティングに参加したことも……。なかでも忘れられないのは、現在も放送されている「ミュージックフェア」という番組である。当時17～８歳だった私は演劇を勉強していて、TV局に見学に入れるツテがあった。番組収録の間、スタジオ外の廊下で私達ファン数名が待っていると、スタッフが手招きをする。「何だろう？」ドキドキしながらスタジオに入ると、隅に置かれたグランドピアノでN・Aさんが収録用の衣装のまま、♪ゴッドファーザー 愛のテーマを弾いてくれたのである！ そのファンサービスに感激して、ますます私は彼を好きになったのだった。しかし……である。人間はときに“偽の記憶”を創りだすことがあるらしい、ということを最近知った。はたしてあの時、N・Aさんがピアノを弾いてくれたのは事実だったのだろうか？ 彼はトランペットを得意としていたが、ピアノも弾けたのだろうか？ 今となっては確かめようもないが、私の心の中には、あの日の愛のテーマのドラマティックなメロディが鮮やかに残っている。夢であっても偽の記憶であっても、私だけの思い出に留めておけば罪はないだろう。
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【ストーリー】
双子の姉妹クレールとジャンヌは、幼い頃からともにピアノに情熱を注いできた。父親からアスリートのような指導を受け、名門カールスルーエ音楽院に入学する。ソリストを目指し、２人のキャリアを左右するコンサートのオーディションに向けて練習に励む日々。しかし、クレールとジャンヌは自分たちの両手がピアニストとしては致命傷となる難病にかかっていることを知る。最悪の事態に直面しながらも、改めてピアノが人生のすべてであり、かけがえのない大切な存在だということに気づく。そして、絶対に叶えたい夢を２人で掴み取るため、家族に支えられながら、自らの運命を変えていくー。
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監督：フレデリック・ポティエ ＆ ヴァランタン・ポティエ
出演：カミーユ・ラザ、メラニー・ロベール、フランク・デュボスク、イザベル・カレ、エリザ・ダウティほか
2024年／フランス／109分／配給：シンカ、フラッグ
https://www.flag-pictures.co.jp/duo-pianist/
2025 年 2月28日（金）より、新宿ピカデリーほか全国公開
