今週は、ありふれた⼩学校を舞台に、全編を主⼈公である7歳の少⼥の視点で描いた『playground/校庭』という映画をご紹介します。学校とは、勉強の他に他者との関係を学んでいく場所だと、この映画の監督は語っています。大人になって必ずその経験が役に立つはずですが、この作品の子どもたちの世界は過酷で、まさにサバイバル。子どもたちには、どんな状況に遭遇しても乗り越えられる力を、持ってほしいと心から願います。

© 2021 Dragons Films/ Lunanime
~シネマエッセイ~
私は幼い頃から活発ではなく、どちらかというと家の中でじっとしている子で、本を読んだり絵を描いたりして過ごすことが多かった。当時は、漫画雑誌の「りぼん」や「なかよし」の付録の着せ替え遊びが、大のお気に入りだったと記憶している。小学校でも、休憩時間に校庭で走り回るようなことは少なく、教室の自分の席で漫画を読んだり、描いたりしていたように思う。小さい頃から一人で黙々と好きなことをやるのが好きだったのだろう。そんな私でも、一人ではできない“ゴム飛び”や““だるまさんがころんだ”などの遊びはもちろんやったことはある。“だるまさんがころんだ”は、鬼が壁や樹木に向かって目を閉じ、「だるまさんがころんだ」と10文字分を数え、鬼ではない子たちはその間に鬼にできるだけ近づき、鬼がこちらを振り向いた時には静止していなければならない。それを繰り返して鬼に誰かがタッチしたら、鬼の負けとなる。もし動いているのを指摘されたら、鬼と手を繋がれ捕虜となってしまう。何人も数珠つなぎになることもあるが、誰かが近づいて数珠つなぎの手をカットすると捕虜たちは解放される。私が遊んだのはそんなルールだったが、地方によっては少々異なるルールだったりもするらしい。鬼が10カウントするための言葉も色々あるとか。大人になって知ったが、近畿地方では「ぼんさんがへをこいた」ともいうらしい。そんな言葉、ちょっと恥ずかしい……では、ほかに10文字の言葉で何か考えてと言われたら、やはり私は「サザンオールスターズ」だろうか? それなら何度でも鬼になってあげよう。
『playground/校庭』の舞台はベルギーの小学校だ。1年生として入学した主人公ノラが放り込まれた悪夢のような学校での日常。まさにサバイバルな日々をノラは過ごす。そんな中、ベルギーでも“だるまさんがころんだ”に似た遊びがあることを、この映画で知った。ベルギーでは「1,2,3、ピアノ!」というらしい。フランス語なので「アン、ドゥ、トロワ、ピアノ」で10文字ということだろうか? 全編がノラの視点で描かれるので、戸惑いや理不尽、恐怖など辛く緊張するシーンが多いが、“1,2,3,ピアノ(だるまさんがころんだ)”に、心が少し軽くなった。子どもたちが興味を持つ遊びって世界共通なのだと……。

© 2021 Dragons Films/ Lunanime
7歳のノラが小学校に入学した。しかし人見知りしがちで、友だちがひとりもいないノラには校内に居場所がない。やがてノラは同じクラスのふたりの女の子と仲良しになるが、3つ年上の兄アベルがイジメられている現場を目の当たりにし、ショックを受けてしまう。優しい兄が大好きなノラは助けたいと願うが、なぜかアベルは「誰にも言うな」 「そばに来るな」と命じてくる。その後もイジメは繰り返され、一方的にやられっぱなしのアベルの気持ちが理解できないノラは、やり場のない寂しさと苦しみを募らせていく。そして唯一の理解者だった担任の先生が学校を去り、友だちにのけ者にされて再びひとりぼっちになったノラは、ある日、校庭で衝撃的な光景を目撃するのだった……。

© 2021 Dragons Films/ Lunanime

© 2021 Dragons Films/ Lunanime

© 2021 Dragons Films/ Lunanime
監督・脚本:ローラ・ワンデル
出演:マヤ・ヴァンダービーク、ガンター・デュレ、カリム・ルクルー、ローラ・ファーリンデン
2021 年/ベルギー/フランス語/72 分/配給:アルバトロス・フィルム
https://playground-movie.com/
3月7日(金)公開