【とっておきシネマ】イギリス映画『ボイリング・ポイント/沸騰』

金曜日の夜9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週は全編ワンショット!という臨場感あふれる作品『ボイリング・ポイント/沸騰』をご紹介しました。

ボイリング・ポイントとは~沸騰、興奮の極み、重大な転機~という意味で、ロンドンの高級レストランを舞台に“沸騰寸前”の内幕を映像化した一味違った映画ですよ。

© MMXX Ascendant Films Limited

【STORY】
一年で最も賑わうクリスマス前の金曜日、ロンドンの人気高級レストラン。
オーナーシェフのアンディは妻子と別居し、疲れきって店に到着する。
その日、運悪く抜き打ちで衛生管理検査があり、書類上の不備で店の評価が下げられてしまう。
気を取り直して開店するが、予約過多でスタッフたちは一触即発の状態。
そんな中、アンディのライバルシェフ・アリステアが有名なグルメ評論家を連れてサプライズ来店する。
さらに、アリステアが脅迫まがいのある取引を持ちかけてきて……と、次々とトラブルに見舞われるアンディ。
もはや心身の限界点を超えつつある彼は、この波乱に満ちた一日を切り抜けられるのか……。

© MMXX Ascendant Films Limited

【REVIEW】
監督は、イギリス・リバプール出身のフィリップ・バランティーニ。
もともと俳優として活躍。2010年代の後半から、監督と脚本に力を注ぎ始める。
2019年、ワンショットで撮影された短編映画“Boiling Point”を発表し、その作品に長編映画化のオファーが殺到し本作につながった。
短編版は、イギリス国内のレストランでシェフやスタッフが日常的に受けている多大なストレスを表現。
忙しい厨房での感覚を再現し、オーナーシェフがアルコールやドラッグに依存して勤務を乗り切る様子が描かれている。
今回の長編では、さらに発展させて、同じ環境で働く他の人々の相互関係を示し、彼らが自らのストレスにどのように対処していくのかが描かれている。
その表現方法は、短編と同じく映画の最初から最後までワンショットで撮影するというスリリングなものだ。
絶え間なく忙しい人気レストランの表と裏をカメラ越しに体感し、同時に濃密な人間ドラマも味わえる非常に興味深い作品である。

© MMXX Ascendant Films Limited

コロナ禍で海外旅行に行けなくなり、この映画を観て、以前に外国のレストランで食事をしたことがとても懐かしく思い出された。
レストランに限らず、外国の働き方というのは個人のテリトリーがきちんと決まっていて、自分の持ち場にはしっかり責任を持つというプロ意識が感じられる。
しかし、それだけに各々が感じるプレッシャーも大きいのかもしれない。
バランティーニ監督自身も、過去に12年間シェフとして働いたことがあるという。
だからこそ、飲食業界に携わる人々の大きなプレッシャーやストレスがリアルに描かれている点が、ストレートに伝わってくる。

© MMXX Ascendant Films Limited

90分間全編ワンショットというから、私はドキュメンタリータッチなものを想像していた。
が、ドキュメンタリーでも場面転換やインタビューを交えたりなどしてワンショットで最初から最後まで……というのは観たことがない。
まるで一筆書きのようなカメラの動きに驚きながら、このレストランの中で起こる様々な問題やらハプニングやらに釘付けになってしまった。
普通の映画とはケタ違いの緊張感は、撮影スタッフも俳優も相当なものがあったと察する。
カメラの動きが少しでもスムーズでなくなると映画自体の緊迫感が弱まり、俳優が台詞や手順を間違うと、途切れなく撮影してきたそれまでのシーン全てが台無しになるのだ。
観客もそんな現場を想像しながら観ていると、知らず知らず力が入ることだろう。

短い作品だから、あえて細かいストーリーには触れない!
家庭に問題を抱え、検査で店の評価が下がり、スタッフの問題もあれやこれやでいっぱいいっぱいのシェフは、クリスマス直前の忙しい一夜を乗り切ることができるのか~。

監督:フィリップ・バランティーニ
出演:スティーヴン・グレアム ジェイソン・フレミング ヴィネット・ロビンソン
2021年/イギリス/95分/配給:セテラ・インターナショナル
http://www.cetera.co.jp/boilingpoint/
7月15日(金)~シネ・リーブル梅田、神戸 アップルリンク京都などで公開始まる

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