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【とっておきシネマ】日本映画『渇水』

金曜の夜9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週も2作品ご紹介しました。どちらも6月2日(金)公開の日本映画です。

まずは、企画プロデュース白石和彌、監督は髙橋正弥監督、生田斗真主演の『渇水』から。
原作は、河林満さんの「渇水」(1990年 角川文庫刊 )で、文学界新人賞を受賞し芥川賞候補にもなった小説です。
30年前に書かれた小説でありながら、貧困や格差社会、家族の絆など、現在でも重要な問題として何ら変わっていないことが空しく感じられます。
ラジオドラマ化もされ、第28回ギャラクシー賞ラジオ部門優秀賞を受賞しているヒューマンドラマです。

©「渇水」製作委員会

【STORY】
日照り続きの夏。
市の水道局に努める岩切は、同僚と共に来る日も来る日も水道料金を滞納している家庭を訪ね、水道を止めて回っていた。
妻や子供ともうまくいかず、渇いた日々……。
県内全域で給水制限が発令される中、岩切は2人きりで家に残された幼い姉妹と出会う。
父親は蒸発、一人で姉妹を育てる母親もめったに帰ってこず、すでに電気もガスも止められている。
そんな困窮家庭にとって最後のライフラインである“水”を停めるのか、停めないのか。
葛藤を抱えながらも岩切は規則に従い停水を執り行うが……。

©「渇水」製作委員会

【REVIEW】
とにかく初めて見る笑顔のほとんどない生田斗真。
ひまわりのような明るいキャラクターというイメージだが、今回演じている役は、色々なことに違和感や怒りや葛藤を憶えながら、とにかく事務的に仕事をしている男。
眼が完全に死んでいる。耐えられないのだ、こんな冷酷な仕事。
働かずに水道料金を払わない住民もいれば、頑張っても頑張ってもお金が払えない住民もいる。
しかしそれぞれの事情に同情してはいられない。公平に「停水」を執行しなければならないのが公務員なのだ。
おまけに、帰宅しても妻は子供を連れて実家に帰ったままで、疲れを癒してくれる家族はいない。

©「渇水」製作委員会

母親に放置された幼い姉妹の住む家の水道を停める時、岩切は家中の水を貯められるものに水を入れる。
その水が無くなる前に母親が帰ってくるように願いながら……だろう。
この姉妹との出会いが、岩切がため込んでいたものを爆発させるきっかけになっていく。

©「渇水」製作委員会

河林満の原作と、今回の映画の結末は違う。
原作は誰もが願うハッピーエンドではなく、悲しく衝撃的なラストになっているのだ。
著者が立川市職員として在職中に書かれた作品だけに説得力はあるが、映画の結末が原作どおりだったら、やりきれない……。

原作:河林満『渇水』(角川文庫)
監督:髙橋正弥
出演:生田斗真 門脇麦 磯村勇斗 山崎七海 柚穂 宮藤官九郎 池田成志 尾野真千子
2023年/100分/日本/配給:KADOKAWA
https://movies.kadokawa.co.jp/kassui/

6月2日(金)~公開
関西では、TOHOシネマズ梅田、109シネマズHAT神戸 TOHOシネマズ西宮OSなど

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