毎週金曜日午後9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週も2本の映画をご紹介しました。あれも面白い、これも観てほしい……と、1本に絞り切れない私の心情をお察しくださいね。
どちらも、語り合うこと、話し合うこと、異なる意見を尊重することなどを、あらためて気づかせてくれる素晴らしい作品です。
まずは、アメリカ映画『ウーマン・トーキング 私たちの選択』。
自らの尊厳を守るために、語り合った女性たちの感動の物語です。
脚本と監督は、女優としても活躍するサラ・ポーリー。
この映画は本年度のアカデミー賞®で作品賞、脚色賞の2部門にノミネートされ、脚色賞を受賞しています。
【STORY】
2010 年、自給自足で生活するキリスト教一派の村で起きた連続レイプ事件。
これまで女たちはそれを「悪魔の仕業」「作り話」である、と男たちによって否定されていたが、ある日それが実際に犯罪だったことが明らかになる。
その事件のため男たちが村を留守にしている2日間に、尊厳を奪われた彼女たちは自らの未来を懸けた話し合いを行う―。
【REVIEW】
原作は2018年に出版された、ミリアム・トウズによる同名ベストセラー小説『WOMEN TALKING』。
2005年から2009年にボリビアで起きた実際の事件を元に描かれている。
男たちを「赦す」のか、「闘う」のか、「村を去る」のか……。
タイムリミットは、犯人たちが保釈され村に戻るまでの2日間。
彼女たちは今後の人生をどう歩むのか、女たちだけの話し合いが納屋で開かれる。
話し合いの記録係は、一度このコミュニティから出て大学で学び、帰郷して教師となったオーガストという男性だ。
このコミュニティでは、学校に通えるのは男の子だけで、女の子は教育を受けられず、読み書きができない。
唯一の男性オーガストが、記録係となって女たちの話し合いを手助けするのだ。
さて、彼女たちの選択は?
今回、試写を観ていない私は、この物語の結論を知らない。
もし、自分がこの村の住人だったならと考えてみると、個人的には「村を去る」ことを選ぶだろうと、まずは思った。
過去を忘れて、違う場所で生まれ変わるほうが楽ではないか……と思うが、映画ではどんな結論になるのだろうか。
また、どんな意見が交わされ、何が問題点となるのか……その過程も知りたいと思う。
自分とは違う考え方や思いに触れることで、登場人物が心変わりすることも当然考えられるだろう。
彼女たちの意見が変化していく様子を見ている観客自身も、ひょっとしたら心変わりするかもしれない。
「人類すべてが互いに傷つけあわずに生きていける世界、優しさを究極の目標とする世界への希望を描いている」と出演者の一人は語っている。
直接的な性暴力のシーンは描かれず、未来を見つめる女たちによる話し合いによって、男たちを非難糾弾するだけの作品ではないと確信させてくれる。
脚本・監督:サラ・ポーリー
出演:ルーニー・マーラ フランシス・マクドーマンド クレア・フォイ ジェシー・バックリー ベン・ウィショー
2022年/アメリカ/104分/配給:パルコ ユニバーサル映画
https://womentalking-movie.jp/
6月2日(金)~全国公開 関西では、大阪ステーションシティシネマ シネ・リーブル神戸 TOHOシネマズ西宮OSなど