金曜の夜9時からおおくりしている、最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週ご紹介した作品は、原題が『What’s Love Got to Do With It』、邦題は『きっと、それは愛じゃない』というイギリス映画です。
愛し合って結婚する恋愛結婚か、結婚してから愛を育むお見合い結婚か……イギリス発の作品でこのテーマというのが、とても意外。
パキスタンのエキゾチックな結婚式も見どころのひとつとなっています。
【STORY】
ドキュメンタリー監督として、ロンドンで活躍するゾーイは、久しぶりに再会した幼馴染で医師のカズから、見合い結婚をすると聞いて驚く。
なぜ、今の時代に親が選んだ相手と? 疑問がたちまち好奇心へと変わったゾーイは、カズの結婚までの軌跡を次回作として追いかけることにする。
「愛もなく結婚できるの?」とカズに問いかけるゾーイ自身は、運命の人に出会えると信じてきたが、いまだに理想の人にめぐり会えないでいる。
そんな中、条件の合う相手が見つかったカズは、両親も参加するオンラインでお見合いを決行。
数日後、カズから「婚約した」と報告を受けたゾーイは、実はファーストキスの相手でもあるカズへの見ないふりをしてきたある想いに気づいてしまう。
果たして、彼女がたどり着いた、すべての悩める現代人の心に響く“ 答え”とは─?
脚本家のジェミマ・カーンが、20歳の時にパキスタン人と結婚し、パキスタンで10年間過ごした経験を踏まえて書かれた物語。
パキスタンは活気にあふれた魅力的な国であるのに、テロや過激派という危険なイメージから否定的に描かれることが多いという。
そんなパキスタンで生活するうちに気がついたのは、生涯続く愛を見つけることに関して、東洋と西洋とでは大きく異なる観点があるということ。
ロマンスに対するアプローチが東西でどう違うのかを探究することが、この作品の出発点になったという。
この映画は、見合い結婚と恋愛結婚のどちらが正しくてどちらが間違っている……などと、断定も匂わせもしていない。
パキスタン人のカズの両親は彼らの両親が勧めた見合い結婚で仲の良い家庭を築いている。
しかしカズの姉妹は、ほぼ駆け落ち状態で結婚し勘当されているが、それでも幸せに暮らしている。
主人公のゾーイは、デーティングアプリ(出会い系のようなもの)で恋愛にまで発展しない中途半端な交際ばかり繰り返して、幸せにははまだほど遠い。
ゾーイとカズそして周囲の人たちを通して、どんな結婚がベターなのかを考えたくなる作品。
愛とは、何なのか……この映画の中で「生涯続く愛は、コトコト煮て沸騰させる」という表現が私のお気に入りになった。
監督:シェカール・カプール
出演:リリー・ジェームズ シャザド・ラティフ エマ・トンプソン シャバナ・アズミ サジャル・アリほか
2022 / イギリス / 109 分
配給:キノフィルムズ https://wl-movie.jp/
12/15(金)より ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国公開
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