金曜日配信、最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週は、天国から休暇をもらって降りてきた母ポクチャと、母のレシピで定食屋を営む娘チンジュのファンタジーストーリー、『母とわたし3日間』をご紹介しました。
~鳥飼美紀のシネマエッセイ~
現在の自宅に住んで28年になる。当時は日本で最も人口増加の多い街として人気のあったわがニュータウンは、“運”が強くなければ住むことができなかった。その運とは“クジ運”である。区画ごとに売り出される新築の一戸建てはそれぞれ抽選で販売される。それまで住
んでいたマンションに倍率5倍で当選した私はクジ運が強い方だと自信満々だったが、この時はあっけなく落選してしまった。のちにこの家が100倍以上の倍率だったと聞いて、「そりゃ、当選する方が怖い」と思ったものだ。この家が何故それほどの人気だったのかというと理由は簡単、他の家より若干安かったからだ。さて、落選したのになぜ住んでいるのか?
実は当選した人と次点の人が資金繰りなどの都合で辞退されたとかで、再抽選となったのである。再び応募し、抽選会場に出かけた私は「次点」という中途半端な当たり方をしてしまう。しかし、この家と縁があったのだろうか、またしても当選した人がその場で辞退され、めでたく「繰り上げ当選」となった!これを「クジ運が強い」というのは無理があるかもしれない。「引き寄せる力が強い」とか「家との縁があった」とでも言おうか……。
映画『母とわたしの3日間』で、母親のポクチャは亡くなってはや3年。天国での生活にも慣れた頃、3日間だけ地上に降りられるというクジに「繰り上げ当選」する。最初の当選者である男性は、遺してきた妻に会いに行くためにクジを引いたのだが、その妻が亡くなり天国に来てしまったので地上に降りる必要がなくなった。それでポクチャが繰り上がったという訳なのだ。ポクチャにはアメリカで大学教授になった自慢の一人娘がいた。ポクチャが存命の頃は決して良好な母と娘の関係ではなかっただけに、娘の成功を見届けたいという気持ちで地上に降りたのだった。しかし、予想とは違った現実にポクチャは戸惑う。いったい娘はどうしてしまったのか……。
わかり合えても、わかり合えなくても、親の愛は何と深いのだろう。ラストにポクチャが選んだ道は、あまりにも切ない。
亡くなって 3 年目になる日、ポクチャは天国から 3 日間の休暇を与えられ、ルール案内を担当する新人ガイドと共に地上に降りてくる。アメリカの名門大学の教授である誇らしい娘に会えることを楽しみにしていたのもつかの間、かつて自分が住んでいた故郷の家に戻り定食屋を営むチンジュの姿を見て戸惑ってしまう。いらだつ母親の気持ちも知らないチンジュは、ソウルから訪ねてきた親友のミジンとポクチャが残したレシピを再現しながら、なじみのある料理と共に次第に母との思い出が蘇っていく···。
監督:ユク・サンヒョ
脚本:ユ・ヨンア
撮影:キム・ジヒョン
編集:キム・ソンミン
音楽:JAWAN
出演:キム・ヘスク、シン・ミナ、カン・ギヨン、ファン・ボラ、パク・ミョンフン、チャ・ミギョン
2023年|韓国|105分|シネマスコープ|DCP5.1ch|日本語字幕:小西朋子
原題:3일의 휴가|英題:OUR SEASON|レイティング:G|配給:クロックワークス
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公式サイト https://klockworx-asia.com/season/
5月24日(金) シネマート新宿 ほか 順次公開
映画『母とわたしの3日間』挿入歌
【とっておきシネマ】
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