金曜の夜9時からおおくりしている、最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週は全く趣の異なる2本の映画をご紹介しました。
まずは、2008年の三谷幸喜脚本・監督『マジックアワー』の中国版リメイク『トゥ・クール・トゥ・キル~殺せない殺し屋』。
これまでに中国でリメイクされた日本映画の中で、最もヒットした作品だそうですよ。
【STORY】
万年エキストラばかりの売れない役者・ウェイは何度失敗しても諦めることなく、俳優の夢を追い続けていた。
ある日、彼は大スターの女優・ミランから映画の主役として、伝説の殺し屋・カール役に抜擢される。
その映画と言うのは、ミランと彼女の弟で映画監督のミラーが、ある事情で追い詰められて画策した“嘘の映画”だった。
何も知らないウエィは全力で殺し屋を演じるが、計画はやがてコントロールを失い、次々と予期せぬ展開に巻き込まれていく――。
【REVIEW】
三谷版『マジックアワー』では、売れない役者を佐藤浩市が演じ、彼のイメージを覆すコメディタッチのキャラクターが存分に楽しめた。
一方、本作で売れない役者を演じるウェイ・シャンは、いかにもコメディアンっぽく、愛嬌があって親しみやすいキャラクターである。
彼を含めて、監督をはじめ俳優や制作陣の多くが中国の喜劇集団・開心麻花(カイシンマーファー)のメンバーだという。
開心麻花は中国一のコメディブランドということで、笑いの質が高く、ドタバタがとてもスマートに思える。
そして、ヒロインの女優・ミランを演じたマー・リーの圧倒的な存在感と美しさも印象に残る。
三谷版のタイトルである“マジックアワー”とは、日の出前や日没後に数十分体験できる、薄明りの時間帯を指す撮影用語だ。
まだ辺りが残光に照らされている、ほんのわずかな美しい時間帯で、映画では「誰にでもある“人生で最も輝く瞬間”」を意味するという。
だから、ウェイが映画の主役「殺し屋カール」を力いっぱい演じている時が、彼にとって人生最高に輝いている瞬間なのだ。
自分が主役ということを微塵の疑いもなく信じているウェイが、真面目に演じれば演じるほど笑いを呼び……やがて哀しく見えてくる。
セットのレトロな建物が三谷版と似ていたり、話題になったあの~殺し屋を演じる佐藤浩市が、ナイフを舌で舐めまわす不気味かつ滑稽なシーン~も描かれる。
中国版『マジックアワー』、是非大きなスクリーンで笑いに笑って観ていただきたい娯楽作品である。
監督・脚本:シン・ウェンション
出演:マー・リー、ウェイ・シャン、チェン・ミンハオ、アレン・アイ、ジョウ・ダーヨン、ホァン・ツァイルン
2022年/中国語/109 分/配給:JOYUP /ムーランプロモーション
https://toocool-movie.com/
7月8日(土)~全国公開 関西の劇場は、TOHOシネマズ梅田 キノシネマズ゛神戸国際など