今週のとっておきの1本は、イギリス映画『ポライト・ソサエティ』です。「とっておきシネマ」でご紹介する作品としては珍しいアクション・コメディ。怪しい結婚から姉を救うために命がけで闘う女子高生のお話。イギリス製作ですが、まるでインド映画のようなアクションあり、音楽あり、ダンスありと見どころ満載の作品です。
© 2022 Focus Features LLC. All rights reserved.
～シネマエッセイ～
スイーツ苦手な私でも「素敵だな」と思うのは“アフタヌーンティー”だ。イギリス発祥の習慣で、紅茶などと共に軽食を楽しむ午後４時頃からのお茶のこと。３段になったスタンドに並べられたサンドイッチやスコーン、ケーキなどを、ポットにたっぷり入れられた紅茶と共に一人で平らげるのだから、スイーツ好きには夢のようなスタイルではないだろうか。
そういえば、返還前の香港に旅行した時に優雅なアフタヌーンティーを楽しんだことがある。場所は買い物疲れを癒すために訪れたペニンシュラホテルのロビーラウンジ。ペニンシュラは宿泊するには敷居も料金もとびきり高かったので、せめてお茶だけでも……ということだったと思う。数十年を経た今では記憶も薄まり、ペニンシュラのラウンジがどんな空間だったのか、ケーキやサンドイッチは美味しかったのか、料金はいかほどだったのか、などは殆ど憶えていないのだけれど、スコーンは見事に美味だった。思った以上にふんわりとした舌触りと、濃厚なはずのクロテッドクリームが何の苦も無く食べられたことが嬉しく、「やはり本場の味は違う」（当時はイギリス統治下！）と感動したことは憶えている。
さて、その本場のアフタヌーンティーのシーンが映画『ポライト・ソサエティ』の序盤に出てくる。ロンドンに暮らすムスリム社会のハイソなマダムたちが超豪華なホテルのラウンジとおぼしき場所でアフタヌーンティを楽しんでいる。もちろん、3段になったアフタヌーンティースタンドのてっぺんには本場のスコーンが鎮座している！（あぁ、もう一度あのスコーンを食べたい……） 映画の中のマダムたちの話題は大富豪夫人の息子の結婚相手について。ちょっと背伸びをして参加しているファティマには、画家志望のリーナとスタントウーマンを夢見るリアという二人の娘がいる。長女のリーナは美大生だが「大学を休んでほかの道を探っている」と言うファティマの言葉に大富豪夫人が反応する。その目はまるで獲物を狙う蛇のよう……。
映画は、それがきっかけでリーナとリア姉妹がとんでもない陰謀の結婚に巻き込まれていくアクション・コメディである。タイトルの「ポライト・ソサエティ」（Polite Society）とは「礼儀正しい社会」という意味のようだが、全く礼儀正しくない乱暴な展開と、主人公リアの暴れっぷりが痛快だ。
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ロンドンで暮らす高校生リアの夢は、スタントウーマンになること。学校では変わり者扱い、親からも将来を心配される彼女の唯一の理解者は、芸術家を志す姉のリーナだった。ある日そんな姉が、富豪一家の子息であるプレイボーイと恋に落ち、まさかの急展開で彼と結婚し海外へ移住することに。だが、彼の一族に不審な点を感じ取ったリアが独自に調査を開始すると、その結婚の裏にはとんでもない陰謀が隠されていた。これを知ったリアは姉を救うべく、友人たちとともに結婚式を阻止しようと立ち上がるのだった！
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監督・脚本：ニダ・マンズール
出演：プリヤ・カンサラ、リトゥ・アリヤ
2023 年/イギリス/英語・ウルドゥー語/1０4 分/配給：トランスフォーマー
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公式サイト：https://transformer.co.jp/m/politesociety/
8 月 23 日(金)より、テアトル梅田／なんばパークスシネマ／MOVIX 京都／シネ・リーブル神戸 ほか全国ロードショー
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